トリビア 1 : テングザルのなぞなぞ
熱帯雨林には、とってもユニークな姿かたちをした生き物が数多く暮らしている。その一つとしてご紹介したいのが、世界でもボルネオ島にしか生息していないテングザルだ。
大人のオスには、その名が示す通り大きな長い鼻ある。メスや子供の鼻はツンと上向きにとがっていて可愛らしいのだが、オスの鼻は分厚いヘラのように下向きに垂れ下がり、とてもユニークでインパクトがある。(写真1)
テングザルの世界ではオスは鼻が大きいほどモテ、一夫多妻の群れを形成する。オスはウーともブーともつかない低音の声で群れを統率するのだが、その声はほとんど口を動かさないわりに大きい。どうやら大きな鼻使って響かせているらしい。
この顔をじっくりと見ながら鼻で響かせるとはどういうことなのかを想像すると、ひとつ気になってくることがある。そう、鼻の穴だ。どうやって息を吸って、あるいは吐いて響かせているのか。穴はいったい、どこにどんな形であいているのか…次の中から考えてみてほしい。
A. 象のように先端に開いている。
B.鼻の裏側の前の方に丸く開いている
C.鼻同様に、鼻の穴も長い
D.鼻の付け根付近に開いている
B.(写真2、3参照)
偶然に撮れた写真から、鼻の裏側の様子を知ることができた。なんだか可愛らしい。
最近の研究で鼻が大きいほど声は低く、質もよく、それもメスを引きつける魅力の一つとなっているらしいことが分かってきた。大きな鼻は、ビジュアルと、声質の2重のメリットをオスにもたらすようだ。
テングザルの生息地はマングローブ林や川辺林。テングザルもオランウータン同様に様々な開発によって生息地が急速に縮小し、個体数を減らしている種のひとつ。このユニークな種を絶やさないためにも生息地の保全が急務となっている。